脳が2%しかなかった男の子が起こした奇跡

ノア・ウォール君は脳が成長することを証明した奇跡の男の子です。僅かな脳しかない状態で生まれた子どもが立派な男の子に成長できた理由は、今の科学では明らかになっていません。
脳が2%しかなかった男の子が起こした奇跡

最後の更新: 24 9月, 2020

解剖学的に脳が成長したという、実に驚くべき奇跡を起こしたノア・ウォール君(Noah Wall)。 間違いなく科学的好奇心を掻き立てられますが、それだけではありません。ノア君は、人間の脳に関する知識の幅を広げてくれたのです。 

この驚くべき脳の成長を遂げたのはイギリスの少年ノア・ウォール君です。脳が僅か2%しかないという状態で生まれたのですが、通常はすぐに亡くなってしまうことが多いため、ノア君がなぜ生きていられるのかも謎なのです。しかし、何よりも信じられないことは、何年にも渡るケアと治療のおかげで、ノア君の脳が正常な脳の80%にまで成長したという事実です。

『あなた自身が設定したものを除き、人生に制限はない』

―レス・ブラウン―

この奇跡的な脳の成長を語る上で忘れてはならないものがあります。それはノア君の両親が突き付けられた戦いです。両親のおかげでノア君は今も元気に生きることができているのです。これは、限界は心の中にしか存在しないことを証明する、愚直なまでの信念、努力、そして忍耐の物語です。

脳 2% 奇跡

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 症例:ノア・ウォール

シェリー・ウォールさん(Shelley W all)は、世界で何よりも子どもを望んでいました。そのため、妊娠したことが分かると我が子との対面に胸を膨らませたのでした。しかし、その幸せは長続きしません。いくつかの精密検査を行うと、医師から恐ろしい知らせを告げられたのです。それは、生まれてくる子に重度の二分脊椎症があるということでした。つまり、胎児の背骨(脊椎)の癒合が完全に行われず、背中の骨が2本のまま一部開いた状態で生まれてくるということです。

しかし、悪いニュースはこれだけではありませんでした。胎児の脳には脳腫瘍があり、それが灰白質の発達を妨げていることを医師は両親に伝えます。つまり、脳内に液体が溜まっていたのです。これらの症状を改善する方法がないため、医師のアドバイスは中絶することでした。まだ生まれてもいない我が子には制限に満ちた人生しかないのかと、シェリーさんは絶望のどん底に突き落とされました。

実際、その子は生まれてからも生き延びることはできないと思われていました。たとえ亡くならなくても、重度の身体的・精神的障がいと共に一生を過ごさなくてはいけないのです。シェリーさんとご主人のロブ(Rob)さんは話し合いを重ね、妊娠を継続することを決心しました。しかし同時に、息子のお葬式の準備も始めたのでした。

脳の成長

医師たちは夫婦の決断を尊重すると同時に、DNR 指示(蘇生処置禁止指示)を出しました。これは、出産時にノア君の呼吸が停止しても蘇生させる緊急処置を施すことを禁止するものです。そして、201236日、シェリーさんは12人の医師が立ち会う中、帝王切開にてノア君を出産しました。

医師たちはすぐに手術室にノア君を連れて行き、二分脊椎の閉鎖手術を行い、頭の大部分を満たしていた脳脊髄液を排出しました。誰もが驚いたことに、ノア君の命は助かっただけでなく、手術は大成功だったのです。

医師、手術、そして通院の毎日だったノア君の幼少期。そして、ノア君が少しでも成長するようにと世話を懸命に続けた両親の努力。理学療法と認知運動療法を組み合わせた神経理学療法を受け続けたノア君は、両親の夢にまで見ることを達成したのでした。ノア君の脳が成長したのです。

 

脳 奇跡

希望に満ちた世界

ノア君の急成長は生後3年の間に起きました。脳のごく一部が他の部分の機能を学習し、脳全体の成長につながる仕組みは神経学者にも未だ謎です。そして驚くべきことに、ノア君の症例は科学的に未だに詳しく研究が行われていません。

ノア君の脳は通常の80%にまで成長し、同じ年代の子とほぼ同じにまでなりました。なぜ「ほぼ」同じかというと、片足を動かせるようになった瞬間を公表はしたものの、まだ歩くことができないからです。

ノア君の両親は、大変でもあり刺激的でもあったこの経験を共有することを決め、”Hugs for Noah” というブログを開設。ノア君を担当した神経外科のクレア・ニコルソン医師は、ノア君の生きたいという強い想いに感動したと言います。彼女の言葉を借りると、ノアは「2人の素晴らしい両親を持つ、素晴らしい少年」なのです。


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  • Balari, S., & Lorenzo, G. (2016). La biología evo-devo, el crecimiento del cerebro y la evolución del lenguaje. Ludus Vitalis, 18(33), 49-77.


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