脳を訓練して今より幸せになるためには?
脳を訓練することによって今より幸せになることなど可能なのでしょうか?近年では、幸せのための奇跡の救済策のようなものが無数に登場してきていますし、いくつかの戦略を用いれば私たちは自助努力をすることができます。しかし、幸せになるというのはそんなに簡単なことなのでしょうか?今よりも幸せで楽観的になる上で役立つ方式は存在するのでしょうか?
簡潔に言うと、その答えは「ノー」です。心理的な幸福状態や真に満ち足りた状態に関わるものはどれも、簡単に手に入るわけでもすぐに手に入るわけでもありません。
まず手始めに、私たちの脳というのは、私たちが幸せであるか否かを気にかけてくれないという事実を理解する必要があります。脳にとって大切なのは、肉体を生存させることだけなのです。私たちが、自らの最大の恐怖心にばかり、あるいは自分をコンフォートゾーンに留まらせてくれるようなプロセスにばかり気を取られてしまうのはそれが理由です。
さて、このように脳は変化に抵抗しようとしますが、だからといって変化できないというわけではありません。人類が進化を続けてきたことは明白であり、その過程では複雑な状況に自らを適応させる術を学んできました。また、実際の臨床現場では患者をバランスの良い状態に到達させ、回復をもたらすことが可能です。ただし、ここでは真剣で積極的な治療参加が求められます。
脳を訓練することで今より幸せになれる?
脳を訓練して今より幸せになろうという取り組みは、食生活を変えるだけで成立するわけではありません。また、今より積極的な生き方をしたり、スポーツを始めたり、あるいは一年に一、二回旅行をすれば良いという問題でもないのです。確かに生活にこういった変化を加えれば今より健康になれますし、一日か二日間ほどは満ち足りた気分になれるでしょう。
しかし、上記の戦略はどれも、ストレス対処術を学ぶことには役立ちません。再び人生が困難に見舞われ始めたとしても、立ち直る方法を知らないままなので、無力感や恐怖、不安を感じるようになってしまうでしょう。
心理学者ミハイ・チクセントミハイが暴き出したように、今より幸せな生活を手に入れるための魔法のレシピなどは存在しません。幸せへの道のりは個人的なプロセスであり、クリエイティビティやオリジナリティが必要になります。それでも、はじめの一歩として基本的な一連の事実を知っておくことが役立つはずです。
脳を訓練し、物事を思慮深く考えられるようになることの重要性
神経科学は私たちに、思考とは単なる脳活動の産物に過ぎないのだということを示してくれています。脳は、電気接続の結果として思考を作り出しているだけなのです。確かにこれは事実なのですが、思考は脳に対するちょっとしたパワーを持っています。というのも、思考は新たな接続を作り出すことができる上に、脳の形までをも変えてしまうことがあるからです。
- ネガティブで反復的かつ強迫的な思考は、脳内ネットワークの協調を遅らせる恐れがあります。これらの思考は脳に疲れを感じさせ、前頭前野における活動を低下させます。これにより、問題に対する解決策を見つけるのが困難になってしまうのです。
- 脳を訓練して今より幸せになるためのカギは、この種の脳内プロセスをもっと上手くコントロールできるようになることです。注意深い考え方をするのが健全です。
- 自分の発言する内容や考える内容は全て脳に影響を与えます。したがって、ネガティブな思考パターンを見つけ出し、それをやめられるよう努力しましょう。
- だからと言って、全てを逆転させて浅はかで大げさな楽観的思考を持ち始めれば良いというわけではありません。そうではなく、シンプルに思慮深さを持ち、自身の現状に対してもっと柔軟に対応できるようになることが大切なのです。例えば、一つの問題に対しては十通りの解決策について考えられるようにならねばなりません。視野を広げ、宿命論的な考え方をするのはやめましょう。
目的を持てば、人生に意義を与えることができる
目的のないまま人生を生きていても何の意味もありません。科学的な言い方をすると、これはドーパミンやセロトニン無しで、自分の夢を日々の目標に結びつけてくれる糸を持たないまま生きることと同義です。現実世界が自分にとって意味を持たないのであれば、その世界からは生きる価値を感じることもできません。
これが自分の手には負えないような空虚感に取って代わられると、不安障害やうつ病といった気分障害の発症に繋がるのです。ヴィクトール・フランクルが述べたように、目的は人生に意義を与えてくれます。自分にとってどんなものが大切なのか、そして何のためなら前進する価値があると思えるのかを思い出してみましょう。
このように、脳を訓練して今より幸せになりたいのであれば、人生における自分の目的を理解しなければなりません。日常的なゴール、つまり日々到達すべき目標点を持っておく必要があるのです。その目標というのは、小休憩を取る、誰かと遊ぶ、本を読む、あるいは散歩に出かけるといったシンプルなものでも構いません。
幸せとは、自分自身に対して心地良い気分を持てること
毎日幸せを感じられる人など誰もいません。同じ精神状態を永遠にキープすることなど不可能なのです。ここで、幸せでいることよりももっと重要なものの存在についてお伝えしておきましょう。それは、自分自身に対して心地良い気分を持つことです。最近では、自尊心の欠如が多くの人々にとって重大な問題となっています。
しかし、これこそが幸福に欠かせない要素であり、人生に満足感を感じるためのターニングポイントなのです。20世紀における最も著名な哲学者の一人であるジョン・ロールズはかつて、社会が幸せになることを願うのであればその市民は自分自身への敬意を持たねばならない、と主張していました。
ロールズにとって、自由を手に入れ、進歩と幸福に値する人物になるためには自分自身を信じることが必要不可欠だったのです。そして、自尊感情の反対は無力感であるというのが彼の考えでした。
簡単に言うと、「脳を訓練して今より幸せになることはできるのか?」という問いに対する答えは「イエス」です。ただし、これは簡単に成し遂げられるタスクではありません。この訓練には毎日取り組む必要があります。複雑で骨が折れる上、勇気も求められるタスクなのです!
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- Berridge, K. C., & Kringelbach, M. L. (2011). Building a neuroscience of pleasure and well-being. Psychology of Well-Being: Theory, Research and Practice, 1(1), 3. https://doi.org/10.1186/2211-1522-1-3
- Kringelbach, M. L., & Berridge, K. C. (2010). The functional neuroanatomy of pleasure and happiness. Discovery Medicine, 9(49), 579–587.