神経科学:心の働きを理解する方法

神経科学は、脳と心、そしてそれらの相互作用を研究し、他の現象を説明することを扱う科学技術の一分野です。
神経科学:心の働きを理解する方法
Gema Sánchez Cuevas

によってレビューと承認されています。 心理学者 Gema Sánchez Cuevas.

によって書かれた Carolina López De Luis

最後の更新: 04 8月, 2024

昔から、神経科学が目標としているのは、 神経系がどのように機能するかを理解することでした。機能的にも構造的にも、がどのように組織化されているかを知りたいのです。最近は、脳の仕組みだけでなく、私たちの行動や思考、感情などにどのような影響を与えているかも研究されています。

物理的な脳と、概念的な心を関連付けているのは認知神経科学です。この分野は、神経科学と認知心理学が混ざったものです。後者は、記憶、言語、注意などのより高機能の知識を扱います。したがって、認知神経科学の主な目標は、脳機能を認知能力と行動に関連付けることにあります。

新たに開発された技術により、この分野における研究が可能になりました。ニューロイメージング研究では、異なる機能を有する具体的な構造を関連付ける作業を容易にしてくれています。 ここで特に有用なツールは、核磁気共鳴イメージング、つまりMRIです。異なる病理学的状態を治療するために、非侵襲的経頭蓋磁気刺激法のようなツールも開発されています。

神経科学の始まり

神経科学の始まりについて、神経科学の基礎を築いた巨人:サンティアゴ・ラモン・イ・カハル(Santiago Ramon y Cajal)を抜きにして語ることは出来ません。神経系の発達・変性・再生、に関する彼の貢献は、今日でも依然として重要であり、科学者は絶えず彼の仕事に加わっています。神経科学の始まりに日付を入れなければならないのであれば、それは19世紀になるでしょう。

ニューロン

この分野は顕微鏡の発展と共に発展してきました。組織を染色するような実験的技術、および神経系の構造・機能性に関する研究もまたそれを大いに助けました。

しかし、神経科学と、私たちの脳の働きの理解は、さまざまな領域の知識から成長してきました。神経科学における多くの発見は学際的・集学的であるといえるでしょう。

解剖学は、身体のすべての複雑な内部分の位置を決定するために重要な貢献をしました。生理学は体の仕組みに焦点を当てています。薬理学は、体内で分泌される物質(神経伝達物質など)を用いて、身体と生化学における外部物質とその影響に注目しています。

心理学はまた、行動や思考に関する理論を通じて神経科学に重要な貢献をしてきました。長年にわたって、心理学はそのような「位置付け」の観点から遠ざかっています。この観点で言えば、脳の各領域が特定の機能を有すると考えられていました。今は、研究者は、脳の全体的な機能を理解するという目的で、より機能的な見方をしています。

認知神経科学

神経科学は幅広い科学研究分野です。基本的な研究から、根本的な行動メカニズムの影響を受けた応用研究まで、そのすべてが含まれています。神経科学の中で、認知神経科学は言語、記憶、意思決定などの高機能がどのように働くのか理解しようとしています。

認知神経科学は、精神プロセスのニューロン基質に焦点を当てています。言い換えれば、私たちの行動や思考が脳にどのような影響を与えるのか?ということです。私たちは、感覚機能と運動機能に関係する脳の特定の領域を検出しましたが、これらの領域は全体の皮質の四分の一に過ぎないのです。

男の手の中にある脳

関連領域には特定の機能はありません。代わりに、伝達・統合を担当し、感覚機能と運動機能調整をしています。これにより、彼らは優れた精神機能を担うことになります。記憶、思考、感情、意識、性格などの機能を支配する脳領域は、見つけるのがはるかに難しいです。

記憶は、脳の中心部にある海馬と関係があります。 感情に関することでいえば、辺縁系は渇きと飢え(視床下部)、攻撃性(扁桃)、および感情を全体的に制御することがわかっています。そして、それは脳が認知能力を統合している皮質です。それは私たちの意思が生まれる場所であり、また複雑な推論が持ち出される場所です。

脳と感情

認知神経科学が私たちの理解を助けた領域の1つは、感情です。感情は、人間の生活の中で非常に重要です。私たちはみな、それを経験しています。私たちは内臓運動の変化や典型的な身体的・運動的反応、特に顔面筋肉の動きを介してすべての感情を表現しています。

古くから、研究は感情は大脳辺縁系の働きあるとしてきました。これはまだ真実であると考えられていますが、脳の他の領域も同様に関係していることが発見されました。

これらの他の領域には、扁桃体と眼窩、そして前頭葉の内側核が含まれます。これらの領域は相互作用して感情の伝達系を形成します。感情的な信号を処理するのと同じ構造が、意思決定や道徳的判断などの他のタスクに関与します。

内臓運動核および体細胞運動ニューロンは、私たちが感情を表現する方法を調整します。感情と自律神経系の活性化は密接に関連しているのです。

恐怖や驚きなど、どんなタイプの感情も、心拍数の増加、発汗、震えなしでは起こりません…これらの感情を非常に豊かにする行動の一部です。

女性の感情表現

感情は、他の人に私たちの心の状態を知らせるツールです。人間が喜び、悲しみ、怒りなどをどのように表現しているかには、共通するところがあります。実際、研究はさまざまな文化にわたってその類似点を観察してきました。それは、私たちがコミュニケーションする中で、他の人と共感する方法の一つです。

メモリー、脳の記憶領域

認知神経科学が扱う領域の1つは記憶です。記憶は、学習された情報のコード化、記憶および検索を含む基本的な心理的プロセスです。私たちの日常生活における記憶の重要性は、広範な研究を動機付けてきました。さらに、「忘れること」は多くの研究のテーマの中心です。なぜなら多くの病理学的問題は記憶喪失に関連し、それは人々の日常生活に深刻な影響を与えるためです。

私たちの記憶がそのような重要な問題である理由は、それが私たちのアイデンティティの大部分を占めているからです。一方で、病理学的な意味での「フォーゲットフルネス(忘れること)」は問題ですが、実際には脳は新しい情報のためのスペースを作るために、不要な情報を捨てる必要があります。脳をリサイクルのスペシャリストと呼ぶことができます。

ニューロンの繋がりは、その人の記憶の使い方に基づいて変化します。私たちは情報を保持しつつ、それを使用しない場合、関係するニューロンの接続部位は、それらが消えるまで弱くなります。同様に、新しいものを学ぶときに新しいつながりを作ります。私たちが何かを学び、それが以前の記憶と関連付けることができるものであれば、それは覚えやすくなります。

非常に特殊な記憶喪失を持つ人々の研究の結果、記憶がどのように機能するかについての私たちの理解が大幅に拡大されました。特に、短期記憶の理解が深まり、宣言的記憶を統合するのに役立っています。

最も有名なケースはH. M.の事例です。彼は新しい記憶を作る際の、海馬の重要性を強調しました。しかし、小脳、主要な運動皮質、および基底核は運動記憶を制御します。

言語とスピーチ

認知神経科学はまた、言語についても多くのことを述べています。言語は人間と他の動物との違いを示すスキルです。そのような精度と多くのニュアンスで私たちの思考や感情を伝達する能力は、最も豊かで最も有用なコミュニケーションツールです。私たち特有のこの特徴は、このトピックに関する多くの研究に影響を与えました。

男がマイクを持って考えている

人間の文化の成果は言語に一部基づいています。これは、正確なコミュニケーションを可能にするためです。言語能力は、側頭葉および前頭葉における関連皮質の特殊領域の統合によって変化されます。ほとんどの人にとって、言語の主な機能は左脳にあります。

右脳は言語の感情的な内容を処理します。脳のこれらの領域の損傷は、言語機能を損なう可能性があります。例えば失語症といった症状の原因となることがあります。これは人によって症状が異なります。例えば、言語の生成や理解の難しさだけでなく、発音の難しさも含まれます。

言葉も思考も、脳のただ一つの領域だけでサポートされているわけではありません。むしろ、それは異なる構造間の協力によるものです。私たちの頭脳は、思考や話しをするときに各領域間の協力を、組織的でかつ複雑な方法でこなしています。私たちの以前の知識は、フィードバックシステムにおける新しい知識に影響します。

認知神経科学の偉大な発見

この記事では、すべての重要な神経学的研究を記述することはしません。しかし、次に挙げる発見は、我々の脳の機能について考えていたことを完全に覆し、新たな調査方法を開いたため、最も重要な発見です。以下は、一般的な認知神経科学と神経科学における重要な実験的研究のまとめです。

  • ニューロン新生(Eriksson、1998)。 1998年まで、ニューロン新生は神経系の発達中にのみ起こっているとと考えられていました。この発達期以降、ニューロンは死んでしまい、新しいものは作られていないと考えられていました。しかし、エリクソンが発見したこのニューロン新生により、科学者たちは、老年期にも神経新生が起こることを発見しました。脳は以前考えられていたより可塑性があり、可鍛性を備えています。
  • 育成、認知および情緒発達における接触(Lupien、2000)。この研究では、科学者は、成長中の乳児のスキンシップの重要性を発見しました。スキンシップの少ない子供は、認知機能障害になる可能性が高かったのです。うつ病と高ストレスの状況は、他の子供よりも集中力や記憶力に影響を与えました。
  • ミラーニューロンの発見(Rizzolatti、2004)。ジェスチャーを模倣する新生児の能力は、この研究をスタートさせました。別の人がタスクを実行したのを引き金にして発生するニューロンをミラーニューロンと呼び、それが発見されました。これらのニューロンは、模倣だけでなく共感も含まれており、つまり社会関係を促進します。
  • 認知予備(Petersen、2009)。認知予備の発見は非常に重要なものでした。それは、脳が自分自身の傷害を補う能力を持っていると仮定しています。何年もの学校教育、仕事の遂行、読書習慣、ソーシャルネットワークなど、さまざまな要因がすべてこの能力に影響します。実際に、アルツハイマー病などの病気の障害を補うには、高い認知予備力が必要です。
脳スキャンを見る医者

認知神経科学の未来:「ヒューマン・ブレイン・プロジェクト」

ヒューマン・ブレイン・プロジェクトは、欧州連合(EU)が資金を提供するプロジェクトです。情報通信技術(ICT)に基づいたインフラを構築することを目指しています。このインフラストラクチャーは、世界中の科学者に神経科学分野のデータベースを提供します。目標は、ITCに基づいた5つのプラットフォームを開発することです。

  • ニューロインフォマティクスは、世界中の神経科学的研究のデータを提供します。
  • 脳シミュレーションは、まとまった情報をコンピュータに統合し、人では実行できない実験をコンピューター上で実行します。
  • 高性能コンピューティングは、神経科学者がデータモデリングやシュミレーションに必要とする高性能のコンピューター技術を提供します。
  • ニューロインフォマティクスコンピューティングは、脳モデルを、アプリケーションをテストするための新しいハードウェアデバイスに変換します。
  • ニューロロボット工学は、神経科学および産業界の研究者がプロジェクトで開発された脳モデルによって制御されるロボットで実験することを可能にします。

このプロジェクトは2013年10月に始まり、現在の見積りでは完了までに10年を要します。この巨大なデータベースに収められた膨大なデータは、将来の研究をより容易にすることでしょう。基礎研究はまだまだこのエキサイティングな分野に行くまでの長い道のりが残っていますが、新しい技術の進歩は科学者が脳をより深く理解することを可能にしています。

参考文献

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Eriksson, P.S., Perfilieva E., Bjork-Eriksson T., Alborn A. M., Nordborg C., Peterson D.A., Gage F.H. (1998). Neurogenesis in the Adult Human Hippocampus. Nature Medicine.4(11), 1313–1317.

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Lupien S.J., King S., Meaney M.J., McEwen B.S.(2000). Child’s stress hormone levels correlate with mother’s socioeconomic status and depressive state. Biological Psychiatry 48, 976–980.

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