若々しい高齢者:60歳を超えても人生を謳歌する人々
人は、60歳を超えたからといって人生の最終ステージに突入するわけではありません。だからこそ私たちは、「お年寄り」について語るのではなく、むしろ「若々しい高齢者」について語るべきなのです。
40年ほど前まで、老年期というものは60歳から始まると考えられていました。その歳を超えた人々は定年退職し、ただ毎朝の用事をこなしたり孫たちの面倒を見たりして暮らしていたものです。夫婦は次第に外出しないようになり、家の中の落ち着きやテレビにばかり身をゆだねるようになるというのが一般的でした。しかし近年、高齢者たちの生活への向き合い方は大きなシフトチェンジを遂げつつあります。
古い時代の高齢男性たちは自らの白髪を自慢げに見せていましたし、高齢女性たちがズボンを履くことやメイクをすることはありませんでした。彼ら・彼女らのスタイルは、一般的に死や喪服が連想されるような暗いカラーやニュートラルカラーと、朽ち果てた感じのする茶色や黒、グレー、ネイビーブルーといったカラーで構成されていたのです。デザインやファッションなどは完全に問題外で、代わりに厳粛な雰囲気が重視されていました。
ジーンズやスニーカーを履いている高齢者は、「若作りをしている」ことになってしまいます。もし高齢の女性がメイクをしていたりハイヒールを履いていたりすると、場違いだと見なされたり、もっと悪い場合には自分の娘に対抗しようとしている、などと揶揄されていたのです。「あの年齢の女性が大胆な色の媚びたような衣服を着るなんて!」といった具合です。また、雑誌や新聞の中で60歳か65歳以上の人々は「お年寄り」として言及されていました。
幸運なことに時代は変わり、最近では老年期が昔とは異なる目で見られるようになって、「年老いた」55歳〜70歳というのはほぼ絶滅したのです。60歳以上の人々はもはや年寄りではありません。むしろ、60歳というのは再び若さを取り戻すのに完璧な年齢だと感じる人が多くいるのです。
60歳を超えても若々しく
この「若々しい高齢者」たちは、自身の仕事や私生活、そして社交生活における主役の座を降りようとしません。それどころか、人生経験や自由時間の豊富さが、新たな趣味や関心ごとに取り掛かることを可能にしているのです。喜んで新しいチャレンジをしますし、新たなプロジェクトや会社を始めたり、再び学校に通いだす人もいるほどです。
アクティブでいられる時間が平均であと20〜25年残る現代の60歳以上の人々は、人生に対する新たな展望を楽しんでいます。ここでカギとなるのは、計画や愛情問題、セクシュアリティ、仕事、喜びや楽しさ、そして自身の個人的な強みに気づくことです。
この世代の人々は、肉体的健康の重要性を認識しています。だからこそ、週に3、4回エクササイズやスポーツをしたり、ジョギングをしたり、あるいは少なくとも1日に30分は歩こうと努力しているのです。また、ジムで腹筋や臀部を鍛える高齢者を目にすることもあります。一方で、ヘルシーで低コレステロールの食生活が非常に人気を増しており、これにより寿命も伸びてきました。
若々しい高齢者の特徴
若々しい高齢者たちは、現在の私たちが持っているのとは全く異なる社会規範と共に育てられた世代に属しています。それぞれの役割が厳密に定められた社会で生きてきたわけで、その当時は他者の意見を恐れたり、道徳的偏見を持ったりすることが普通でした。それでも、こういった構造から脱却し、新たな自分の役割を作り出すのに十分な勇敢さを持っているのです。
科学技術に関しては、右も左も分からない外国にやってきた移民と同様です。携帯電話からコンピューター、スマートホンに至るまで、新たなテクノロジーの使い方を学ばねばなりませんでした。デジタルネイティブではない人たちがこれを成し遂げたというのは賞賛に値しますよね。この世代の大半が、小学校ではそろばんを習っていたはずですから、現代社会への適応のための努力は相当なものだったことでしょう。
これに加えて、医学の進歩によって寿命が伸びた上、生活の質も向上しました。長生きができるのは、医学や製薬、そして技術の進歩によるものであり、これらのおかげで病気をすぐに予防・発見・治療できるようになったのです。
さらに、若々しい見た目を保つことも可能になりました。美容外科手術により、お腹をぺったんこにしたりハリのある乳房やたるみのない若々しいまぶたを手に入れられるようになったのです。また、ボトックス注射を打てばシワを消して肌のトーンを良くすることもできます。アンチエイジングクリームやヘアカラートリートメントも、男女問わず非常に人気が高くなっています。そして、昔とは違って服装も質素で暗いものではなくなりました。また、タトゥーを入れている高齢者の姿を目にするのもそれほど珍しいことではなくなっています。このように、そのスタイルは全体的に過去の世代のものとは大きく異なっているのです。
また、独身者、離婚経験者、あるいは配偶者を亡くした人々は恋愛市場に参入しており、恋愛生活は驚くほど重要なものとなっています。セクシーな見た目でいたいという気持ちがありますし、他者と関わる際にはイチャつきたいとも思っているのです。
60歳以降のセクシュアリティとアクティブな生活
ここ数年間で、シルデナフィル(一般的にはバイアグラという名で知られています)が60歳以上の人々の性生活に革命をもたらしてきました。そしてこれにより多くの人々が情熱を再燃させ、新たに愛を探すことができるようになったのです。そのため、夫婦や家族の生活も進歩しています。「死が2人を分かつまで」だったものがむしろ、「生活が2人を分かつまで」に変わってきていると言えるでしょう。一方で、寿命が延びたということは恋愛を楽しむ時間が増えたことを意味しながらも、リスクが高まったということでもあります。
若々しい高齢者たちの頭の中には、引退の「い」の字もありません。もっとはっきり言い切ってしまうと、その考えさえ拒絶されているのです。社会の「受け身な階級」の一部になりたいとは思っておらず、代わりにアクティブでい続けるために何かを勉強しようとする人が多いようです。新しい趣味を見つける人々もいる中で、まだ果たされていない夢を再び追いかけようとしてか、改めて学校に通い始める人も多くいるのです。このようにして自分がまだアクティブで有能でやる気に満ちた存在であることを実感し、生活に新たな楽しさを見出します。
若々しい高齢者たち:はつらつとしているが、偏見の目で見られることも多い
そうは言っても、偏見のせいで、若々しい高齢者たちの行動が時間の経過を否定するための手段であるかのように見られてしまうことは多いものです。タトゥーを入れている高齢者を見て、シンプルに馬鹿馬鹿しいとしか思わない人もいるかもしれません。まさに、こういったレッテルは社会的義務感や、人生の各段階がどうあるべきかに関する偏見に満ちた行動とに呼応しているのです。しかし、これほど若々しい高齢者の真実とかけ離れたものはありません。
若く見える外見の背後には、より知的な人生へのアプローチが存在していますが、これは寿命の長さが、エネルギーに満ちた肉体とペアだからなのです。とは言え、60歳以上の人全員が自分は若いと感じているわけではありません。いくつかの研究により、若々しい高齢者たちは都市部の人口密集地により多く存在することが指摘されています。このような場所の方が、自己成長の機会が多く見つかり、会える人の数も多く、刺激的なこともやりやすいのです。
若々しい高齢者は独特な世代観を形成しています。このように、肉体的な限界に気づきつつも楽観的になり、人生に対してポジティブでエネルギッシュでダイナミックな姿勢でいることが非常に好ましいことであるのは明らかです。要するに、全ては「恐れずに立ち向かい、自分の望む生活を組み立てる」という思考態度の問題で、「今後の人生20年間を自分はどう生きたいのだろう?」と自問しているのです。
クオリティオブライフ:人々の神聖な宝物
楽観主義やポジティブな人生観は、セロトニンやエンドルフィンなどの有益な神経伝達物質を生み出します。屋外活動やスポーツは、BDNF(脳由来神経栄養因子)という脳細胞の保護に役立つ神経因子を生成します。知的活動や身体活動は神経の可塑性を増長させてくれるのです。
さらに、寿命が延びたことで「第4の時代」という新たな人生サイクルが生まれるということにも触れておかねばなりません。この新たな概念は、人生サイクル全体について再考することを迫られた結果として生まれたものです。60歳になっても人生が終了しないことを理解して、私たちの成人期に対する捉え方は大きな影響を受けました。例えば、真剣な相手との関係に落ち着くべき年齢や、子どもを持つべき年齢に対する考え方は変わってきていますよね。そして、これが今度は思春期の定義にも影響を及ぼしています。要するに、私たちの人生は全体的に変化したのです。
しかし、これは年齢に関わる肉体的な生存の話ではなく、一生涯を通じたクオリティオブライフについての話です。長期間にわたって弱々しさや老いた感覚を抱き続ける意味などあるのでしょうか? どうやら、この若々しい高齢者たち世代は彼らならではの文化と哲学を創始し、次の世代(30代〜50代の人々)に対してより明るい未来やポジティブな人生観を、そして何より素晴らしいクオリティオブライフを約束してくれているようです。
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