情緒的愛着と見捨てられることへの恐怖

パートナーとの関係がうまくいかないのではないか、と時々心配になってしまうのはごく普通のことです。しかし、不信感や拒絶されることへの過度な神経質さが常に心にある状態で過ごしていると、ただ息苦しさや不安定さが生まれてしまうだけです。
情緒的愛着と見捨てられることへの恐怖
Gema Sánchez Cuevas

によって書かれ、確認されています。 心理学者 Gema Sánchez Cuevas.

最後の更新: 21 12月, 2022

ウェルビーイングを維持するためには、あらゆる領域で安心感や守られているという感覚を感じられる状態でいなければなりません。安全が確保されていれば、自分は信頼され保護されているのだ という実感を得ることができるのです。しかし、もしこういった感覚が過去の亡霊によって脅かされてしまうと、私たちの生活は恐怖心に侵食されてしまうこととなります。その中でも特に強力なのが、見捨てられることへの恐怖です。

見捨てられることへの恐怖が原因で沸き起こる不安は、恋愛関係を密かに傷つけてしまう恐れがあります。特にその恐怖心の出所が、壊滅的で抑圧された幼少期にある場合はなおさらその危険性が高まります。このような強迫的な恐怖心を抱える人は皆、自らの恋人との関係性を無意識のうちに傷つけ、パートナーも恋人がそのような捨てられることへの疑念を持っていることを確信してしまいます。一方で、その恋愛関係は非常に破滅的なものになりかねないため、両人がともに不快で苦痛な悪循環に囚われることにつながる恐れもあるのです。

パートナーとの関係がうまくいかないのではないか、と時々心配になってしまうのはごく普通のことです。しかし、不信感や拒絶されることへの過度な神経質さが常に心にある状態で過ごしていると、ただ息苦しさや不安定さが生まれてしまうだけです。それでは、見捨てられることへの恐怖が暗示する内容についてもっと詳しく見ていきましょう。

愛着の絆が持つ重要性

幼少期の間に、私たちは主な保護者との間に情緒的な絆を確立します。 これが、愛着として知られるものです。この関係性や自分が確立した絆のタイプに応じて、人はそれぞれが一連の情緒的能力を身につけていきます。そして将来的にそういった能力を対人関係のなかで活用していくのです。

しかし、その絆が形成されなかった場合、その子の将来には大きな問題が生じることになります。それが当てはまる人々は、自らの身体的および情緒的なニーズの影響で「自分は守られていない」、「安全ではない」、「信用されていない」、といった感覚を抱えながら育ってこなければならなかった可能性があります。これは、ボウルビイの愛着理論のなかで説明されている影響の一つです。彼は、愛する人々に囲まれているにも関わらず見捨てられる恐怖を多くの人々が抱えていることについて解説しています。それでは、これについてもっとよく理解するために具体例を見ていきましょう。

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お腹を空かした赤ちゃん

赤ちゃんは何時間も食べずにいるとお腹を空かせます。そして自分が空腹であることを全身で伝えようとします。しかし、頼ることのできる手段は泣くことと体を揺り動かすことしかありません。するとこの場合のメインの保護者である母親が、赤ちゃんの発しているサインをキャッチし、赤ちゃんはお腹が空いているのだと解釈します。なぜこのようなことが可能なのでしょうか?母親は自分の赤ちゃんの身体的および情緒的要求を検知し、それらを軽減する方法を徐々に習得してきたからです。これにより、赤ちゃんは生理学的および情緒的バランスを取り戻すことができるのです。

継続的にこのような体験をしながら暮らしている赤ちゃんは、その後常に物理的に母親のそばにいたがるようになります。母親が自分を落ち着かせてくれてバランスを取り戻させてくれる存在として信頼するのです。そしてこの後の発達段階において、その子はただ母親が近くに来てくれるだけで、あるいはただ「すぐ帰ってくるからね」と言われれば、気分が動揺してしまうような経験にも耐えられるようになります。

このため、大人になった時に同じような状況を経験した時にも冷静さを保つことができます。ほんの数時間もすれば家族やパートナー、あるいは友人に会えることが私たちにはわかっているためです。私たちの脳は、何か不安なことがあったとしてもいずれ落ち着きを取り戻せることや、その衝撃が永久的に続くわけではないことを経験上知っているのです。

しかし、幼少期にそのような穏やかな感覚を抱いた経験がなかったり、あるいは悪いことが起きた後にも平穏はやってくるのだと信じることができなかった人の脳は、大人になってからも同じように感じられなくなります。心の落ち着きを見つける方法がわからないので、親密な人間関係のなかで自信を持つことができなくなってしまうのです。

さらに、人との触れ合いに飢え、適切に世話をしてもらえない状態になると、脳内でのアドレナリン生成が増大します。この影響で攻撃的な行動や衝動的な行動が起こりやすくなります。また、自らの感情を制御することも難しくなってしまいます。

カップルに見られる、見捨てられることに対する心の傷

誰もがわかっている通り、見捨てられることへの恐怖心のような傷が心の中には残っており、自分自身でそれを見ることはできなかったとしても、それらは内側の深い部分に潜んでいます。こういった傷は私たちの生活のあらゆる部分に影響を及ぼします。幼少期に経験するたくさんのシチュエーションが、私たちの心にその足跡を残しているのです。そのため、不適切な扱いを受ければ自分でも気づかないうちに心の中が引き裂かれてしまう場合があります。

ボウルビイは自身の愛着理論のなかで、幼少期に形成される情緒的な絆は大人になってからの表象世界におけるモデルという形でそのまま残り続ける、と説明しました。ハザンとシェイブもまた、この事実を彼らの調査の中で裏付けています。この二人は、恋愛関係にある大人の行動は、子どもとその親たちとの間の関係性を起源とする心の知覚の影響を受けて形成されるということを示しました。

このように、恋人との関係性において見捨てられることへの恐怖心を抱いてしまう原因は、その幼少期にあることがわかりました。それは何度も舞い戻ってくる過去の亡霊であり、その人の不安感を煽ります。そして、自分には愛される価値などない、他人から良い扱いを受ける価値などないと思い込ませるのです。この亡霊が現れるのは大抵、脳がある警告サインを受け取った時です。

情緒的愛着

これまでに一度も完全な安心感や安全といった感覚を実感できたことのない人物にとって、「緊急事態」を発動するにはたった一言、あるいは一つの場所や行動、または記憶だけで十分なきっかけとなります。そこから、例えば不安定な感情やアパシー(無気力)、悲しみといった感情や行為が雪崩のように湧き出て姿を現し始めるのです。

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これに加えて、見捨てられることへの恐怖を抱いてしまう人々のほとんどはパートナーに対して感情面で依存するようになります。常に相手から認められていたい、と願うようになるのです。 関係性が有毒なものである場合は、それを終わらせたり互いに距離を置くのは完全に不可能です。まるで、その相手なしでは生きていられないような状態になってしまうのです。そしてその関係性を維持するためにはどんなことでもしようとします。どんなことでも、と言っても古い心の傷を開くことだけは例外です。

中には、この見捨てられることへの恐怖がある種の依存症状を生んでしまう場合もあります。それは、自分には価値がないという感覚や自己非難の感覚への依存です。誰かから求められる感覚や安心感といった感情を持ったことがなかったため、このアイデンティティがまだ自身の中にあることを確かめたがろうとします。それゆえに、実際に他人からの保護と安全を得ることができたとしても、結局それを拒絶したり疑ったりしてしまうのです。これらすべてが、適切に治療されることのなかった奥底に潜む後外傷性ストレスの痕跡によって引き起こされています

見捨てられることへの恐怖

見捨てられることへの恐怖は非常に深い心の傷であり、その起因は幼少期にまで遡ります。この傷を癒すためには、過去と決別するために過去に経験した事柄を受け入れ、許すという過程が必要です。これは非常に複雑な作業になります。特に、これまでの経験によって自分がどれほど弊害を受けてきたのかを本人が認識できていない場合はなおさらです。この状況はしばしば、本人の防衛反応によって悪化してしまいます。自分を守ってくれるはずだったものが、結局はそれほど強いものではないことが明らかになってしまうためです。

率直に言うと、事情がかなり複雑な場合には専門家に助けを求めることが推奨されます。彼らならこういった人々を助けることができますし、特に最初の重要なステップで力を貸してくれるでしょう。もう一つ改善していく必要がある側面としては、自尊心が挙げられます。ほとんどの場合、その人の自尊心は傷ついており、崩壊してさえいるのです。感情面で相手に依存してしまう罠にはまらないようにするには、自分自身の価値を認められるよう働きかけることが不可欠となります。また、高い自尊心を持てていれば、過去の経験の中に沈んでいる感情や思考を整理するのがぐっと簡単になるのです。

感情を変える

怒りや憤り、恐怖、悲しみといった感情は、見捨てられることを恐れている人々の中に非常によく見られます。必要なのは、これらの感情の度合いを和らげ、その感情が実際には何を意味しているのかを解読する方法を学ぶことです。これを実践すれば、それらの感情を何かポジティブなものに変えることができるでしょう。

ネガティブな思い込みや予測もまた、考慮しなければならない要素です。思考というものはほぼ常に私たちの恐怖心に影響を及ぼし、その強度を高めています。思ったことや考えたことのせいで、恐怖心が本来のものよりもだいぶ大きなものに成長してしまうのです。例えばパートナーが自分の元から去ってしまうことを恐れていると、相手の行動や言葉に対してそれまで以上に注意を払うようになります。そして自らの恐怖心が正しいことを確かめようと、それらの行動を誤って解釈してしまうのです。

情緒的愛着 見捨てられる 恐怖

このように、見捨てられることへの恐怖を癒すためには、心を組み立て直していくプロセスが含まれます。これは、かなりの時間を要するプロセスです。私たちは自らの恐怖心に優先的に対処し、その存在を明らかにする方法を知っておかねばなりません。多くの場合、私たちが自分の外側で起こっていると考えているものは実は心の内側で起こっていることの投影に過ぎないのです。もし皆さんがこれらのうちのいずれかの症状に心当たりがある場合は、手遅れになる前にサポートを求め、傷を癒すことをお勧めします。


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