心気症をコントロールするための方法と戦略
心気症をコントロールすることは可能なのでしょうか?自らの健康に関する永遠になくならない強迫観念を、一体どうすれば和らげられるのでしょう?自分の身体で生じている現象のことで頭がいっぱいになっている人は、単なる喉の痛みを何か深刻な感染症の症状なのではないか、と疑います。例えばお腹が痛くなるとそれが次第に手術の必要な病気に変化していくのだろう、と信じ込んでしまうのです。お分かりいただける通り、自分が感じている違和感のことで、それが本物だろうと想像上のものだろうと、どうにかして心を落ち着けたいと願っている人々が大勢います。
現行の『精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM-5)では、「心気症(ヒポコンデリー)」という用語が外され、代わりに新しく「身体化障害」および「病気不安症」の二つの用語が使われるようになりました。しかし、心気症の人、という言い方はいまだに、自分が診断されていない深刻な病気を患っていると思い込んでいる人に言及する言葉として用いられています。彼らは、医師から何度「異常はない」と伝えられてもその信念を曲げません。
この種の不安障害によってこういった人のクオリティオブライフが受けているダメージは相当のものであるということは、重要なポイントです。そのため、最悪のケースとしてうつ病を発症してしまう患者もたくさんいます。そうなってしまうのは、不合理な恐怖心をいつまでも手放せずにいるからです。これは勝手な自己診断や未知の何かへの不安感から生まれるものであるため、対処するのが困難なのです。
こういった人々は例えばガンになることやウイルスに感染することを恐れています。また、自分の知っている人が過去に患っていた病気に自分もかかるのではないか、と考えてパニックになってしまうのです。この臨床状態に陥っている人の個人的世界は極めて悲惨なものとなり得ます。しかし、この種の思考の対処法をいくつか知っておくことが役に立つはずです。
“何かに取り憑かれたかのように4時間もの間症状について検索した後、私はその「取り憑かれたかのように症状を検索する」という行為が心気症の症状の一つだと知ったのです”
-スティーブン・コルベア-
心気症を抑えるためのカギと戦略
心気症の人がセラピーを受けた時に見られる典型的な現象をいくつか見ていきましょう。こういった人は病原菌への恐怖や外出することへの恐怖、また、ウイルスに感染したり不治の病にかかることへの恐怖心について語ります。
まず、そういった考えの多くが不合理なものであることを完全に認識するようにはなりますが、それをコントロールすることができません。自身の抱える恐怖心について論理的になることができないのです。
また、恥ずかしいという思いや、自分自身の振る舞いや感情を理解できないことへの矛盾や怒りの感覚も抱いています。
病気への不安あるいは身体化障害は、あらゆる点においてその人物の精神を大いに擦り減らします。自分自身に対する不快感を感じ、孤立しているという感覚から生まれる社会的問題を経験するのです。さらに、医療制度が自分の特異な症例に対して十分に関心を寄せてくれていない、と考えることもよくあります。不満の感情にこれら全てが加わり、元々あった不安感がさらに悪化していくのです。
そして、心気症的な思考の抑え方を知る上で、一つ理解しておかねばならないことがあります。バレンシア大学でGemma GarciaおよびAmparo Benllochによって行われた研究などが、この病気を治療するためには患者の侵入思考や非機能的信念に焦点を当てるべきだ、と強調しているのです。
心気症は、実は不安障害の一種
この種の強迫観念は疾患というわけではなく、その背後にあるのは病気への恐怖心だけではありません。そのため、心気症を抑え込むためにはこの状態を引き起こしている根本原因が何なのかを知る必要があるのです。つまり、自身が不安障害を抱えているという事実を理解しなければなりません。
そしてその不安は自身の抱く感情がもたらしているということを特定し、理解し、合理化し、心に留めておきましょう。本物ですらない何かを心配しているのは自分自身の頭脳なのです。
ストレスや不安から生まれる身体感覚
不安やストレスを感じている人が無数の身体感覚を経験し得ることは事実です。また、時には頭痛や喉の痛み、胸部への圧迫感などを経験することがあるのも本当です。しかし心配しないでください、不安やストレスがもたらす症状は時に、簡単に特定できない場合があるほど多様なのですから。これまで経験したことのないような感覚や苦痛を感じるたびに毎回インターネットで病気の可能性を調べる、というのはやめてください。
そうではなく、本当の原因はネガティブな思考や不安感であることを思い出しましょう。身体が感じている感覚を怖がる必要はありません。それらの感覚にとらわれるのではなく受け入れることができれば、気分はずっと楽になるはずです。
このような考え方の背後にある感情を理解し、リラックスしよう
「食べ物が飲み込みにくい。喉が腫れているのではないだろうか。感染症かな?ガンなのかもしれない!」、このような心気症的思考を抑えるために、理解しておくべきことがあります。それは、数ある感情の中のいくつかのみが、その種の思考を生み出している、という事実です。
恐怖、不安、苦悩、悲しみ、そしてフラストレーション。これらの感情状態の多くが、思考を変容させて頭の中に留まり続けます。そのため、自分が患っているかもしれない病気について考えている自分に気づくたびに、一旦立ち止まってみてください。そしてその瞬間心の中にある感情が何であるかを特定してみましょう。その感情が明らかになったら、それを解消できるよう取り組みを始めてください。
恐怖心は受け入れつつ、膨れ上がらせないように
あなたは感染症を恐れていますか?ガンが怖いですか?自分は慢性的な病気を持っているのではないか、と不安に思っていますか?そういった恐怖心を抱くのはごく自然なことです。誰もが似たような恐れを感じています。なぜなら、そもそも恐怖というのは具体的な目的を持つ正常な感情だからです。そのため、何かを恐ろしく感じたならそれに対してアクションを起こしてください。ただし、そのアクションは理性的なものでなければなりません。つまり、健全な形で自分自身をケアしてあげる必要があるということです。
お分かりのように、絶対にやってはならないのは恐怖心を増大させ、それを危機に変えてしまうことです。この感情に心を支配されないようにしましょう。恐怖を放置していると不安感が増大してしまうだけです。
心気症を抑えることができたら、自分にご褒美をあげよう
朝目覚めてめまいを感じたあなたは、自分は病気なのではないかと疑います。これほどの不快感の理由は何なのだろう?と。そしてパソコンの前に座り、インターネット検索を始めるのです。このような心気症的行動を抑えるためには、日常的に取り入れられる戦略を知っておかねばなりません。
例えばめまいを感じたのであれば、腰を下ろしてその感覚がなくなるまで待ってみましょう。そして自分自身に(理性的に)、これは不安感による症状に過ぎないのだ、と思い出させてあげてください。そして気分を良い方向に変えられるようなことを行いましょう。例えば散歩をしたりお風呂に入ったり、本を読んだりなど何でも構いません。それができただけで大きな進歩ですので、その後自分へのご褒美をあげると良いでしょう。
最後に、ここで紹介した戦略が必ずしも良い結果に繋がるとは限りません。不調が続く場合には専門家に助けを求めることを考えてみてください。そうすれば、補完的な認知再構成法を教えてもらえるはずです。
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- Arnáez, S., García-Soriano, G., López-Santiago, J., & Belloch, A. (2019). Dysfunctional beliefs as mediators between illness-related intrusive thoughts and health anxiety symptoms. Behavioural and Cognitive Psychotherapy. https://doi.org/10.1017/S1352465819000535